ホーム メール 印刷用
写真
写真
translate

2008年度JARPNII 三陸沖鯨類捕獲調査の結果概要報告


2008年5月22日
三陸沖鯨類捕獲調査団


1.調査の終了

2008年三陸沖鯨類捕獲調査は、4月14日に調査開始し、5月18日をもって全ての調査(ミンククジラの捕獲調査及び餌環境調査)を終了した。 本調査は第II期北西太平洋鯨類捕獲調査 (JARPN II)(主管:財団法人日本鯨類研究所)の一環として行われたものであり、 日本政府が(財)日本鯨類研究所(森本稔理事長)に与える特別採捕許可の下、(財)日本鯨類研究所が東京海洋大学、独立行政法人水産総合研究センター遠洋水産研究所横浜、 宮城県水産技術総合センター及び日本小型捕鯨協会と協力して実施したものである。


2.調査の概要

調査期間

捕獲調査 : 2008年4月14日〜5月18日(35日間)
餌環境調査 : 2008年4月9日〜4月25日(17日間)

調査対象海域

捕獲調査 : 宮城県石巻市鮎川港を中心とする半径50海里内(主として30海里内)の海域。
餌環境調査 : 仙台湾を中心とする三陸沖海域。

調査対象海域

図1.調査対象海域.

調査対象海域.捕獲調査船は鮎川港(★印)を中心とする半径50海里内(主として30海里内)の海域内を、餌環境調査船は沿岸域のジグザグ状のコースを対象に調査を行った。


調査団構成

調査総括:加藤秀弘(東京海洋大学教授)他補佐3名
調査団:安永玄太調査団長(日本鯨類研究所研究部主任研究員)他調査員20名

調査船

捕獲調査:
第28大勝丸(47.3トン、阿部孝喜船長)
第75幸栄丸(46.2トン、高橋栄次船長)
第7勝丸(32.0トン、磯根司船長)
第31純友丸(32.0トン、江浜修船長)
餌環境調査:
拓洋丸(120.0トン、宮城県水産技術総合センター所属、木村博明船長)

3.調査結果

・調査期間35日間(4月14日から5月18日)に、ミンククジラ60頭(雄23頭、雌37頭)を捕獲した。
・捕獲調査船によるミンククジラの発見数は94群96頭(1日隻あたり1.07頭)であり、調査前期(4月14〜30日)及び後期(5月15〜18日)は、仙台湾中央部の海域、中期(5月1〜14日)は鮎川港から約30マイル南方の海域が発見の中心であった(図2)。

area

なお、調査期間中には、5月1〜7日及び5月11〜15日の2回、低気圧や台風の影響で捕獲が無かった期間があり、前・中・後期間は、この荒天による海況の変化を基に設定した。 また、ミンククジラ以外の大型鯨では、ザトウクジラ及びシャチの発見があった。
・捕獲されたミンククジラは妊娠雌6個体を含み、小型から大型の個体まで広く採集された。 60頭の組成は、雄は23頭で平均体長5.67m (4.07-7.78)、平均体重2.31t (0.77-4.91)、雌は37頭で平均体長5.91m (4.13-8.12)、平均体重2.65t (0.86-5.70)であった。 また、前期及び後期には、未成熟個体が卓越しており、中期のみ成熟個体の来遊があった(図3)。

graph

図3.捕獲したミンククジラの性・成熟別組成

・捕獲された個体から観察された胃内容物を表1に示す。餌生物が観察された49個体の内、47個体がイカナゴ(メロウド及びコウナゴ)であり、全体の96%を占めた。 2003年から開始された5回の調査の中で、ミンククジラの胃内容物からコウナゴが観察されたのは、今年が始めてであった。胃内容物重量の平均値は30.0kg、最大で79.8kg、体重比(2.43トン)3.2%であった。

主要餌生物種 4/14-4/30 5/1-5/14 515-5/18
メロウドのみ 22 32
コウナゴのみ 11
メロウド主要、コウナゴ混
コウナゴ主要、メロウウド混
カタクチイワシ
イサダ(ツノナシオキアミ)
空胃他 11
合計 37 11 12 60

表1.ミンククジラの胃内容物から観察された主要餌生物種

・コウナゴを利用していたミンククジラ11個体の内、10個体が未成熟であった。コウナゴを捕食していたミンククジラの平均体長は5.38m (4.13-7.45m)、 メロウドを捕食していたミンククジラの平均体長は6.09m (4.27-8.12m)であり、小型個体がコウナゴを利用する傾向がみられた。 また、捕獲された位置は、メロウドを利用していた個体と比べても沿岸側であった(図4)。


fig.

図4.コウナゴ及びメロウド利用していたミンククジラの分布

これらのコウナゴ利用個体の分布域は、餌環境調査の計量魚単調査結果(図5)とも一致するものであった。

fig.

図5.餌環境調査結果:計量魚探によるコウナゴ反応の分布状況
(宮城県水産技術総合センター春漁情報第4報より、平成20年5月2日)

4.まとめ

・4/14〜5/18日(35日間)の調査期間に、捕獲予定頭数60頭のミンククジラを捕獲した。
・今年のミンククジラの主要餌生物は、メロウドとコウナゴであった。2003年の調査開始より初めて、捕獲したミンククジラの胃内容物からコウナゴが観察された。
・コウナゴを利用していたミンククジラは、沿岸に分布する未成熟個体が主なものであった。
・今後、詳細な解析を通して、ミンククジラがコウナゴを利用する条件についても探求する予定である。


2008年度JARPNII 三陸沖鯨類捕獲調査の結果概要報告 PDF形式

Valid XHTML 1.0 Transitional